痩せる仕組みのお勉強第2回目の今回のテーマは「カロリー収支を把握しよう」です。
急にお聞きしますが、あなたは、家計簿をつけるのは得意ですか?
「yes!」と答えたしっかり者のあなたは、きっとダイエットが成功するマインドをすでに持っている方です!
というのも、貯金することと太ることはとてもよく似ているんですよね。
貯金するには毎月の入ったお金と使ったお金のギャップを把握して、目標額までに「どれくらい得る量を増やせばいいのか/どれくらい使う量を減らせばいいのか」を明確にする必要がありますよね。
また、目標額に達するまでに必要な期間や方法も、割り出すことができます。
小さい単位からコツコツとお金を貯められる人は、そういう基本思考がすでに出来上がっているといえます。
お気づきの通り、ダイエットもまったく同じ理論です。両者の違いは「貯めたいか、減らしたいか」だけなんです。
「収支」の把握は貯金にもダイエットにも有効なんですね!
家計簿つけが苦手という方でも、痩せる仕組みを理解したダイエットで体が変わっていくのを実感すれば、収支を把握することが楽しくなってくると思います!
ちなみに、前回の【痩せるための方程式】ととても関係が深い内容ですので、併せて読んでいただくと、より理解が深まると思います。
それでは、美しくなるためのお勉強スタート~。
さてさて、前回のお勉強で「痩せるための方程式」をお伝えしました。
摂取カロリー < 消費カロリー=体重減少
ですね。
今回は、この不等式を成立させるための必要な考え方をお伝えしていきます。そのために理解しておきたいのは、カロリーを消費するエネルギーの正体です。
消費エネルギーの正体
食べ物は口に入った瞬間から消化されはじめ、体が必要とするときにエネルギーとして使える、つまり消費できるように形を変えて蓄えられます。私たちの体が、どんなことに、どれだけエネルギーを消費するのか、を簡単に言うと、
- 消化のために10%
- 身体運動のために20%
- 臓器や体内組織の基本機能を支えるために70%
の3つということになります。それぞれをもう少し専門的に言うと、
①消化のため=DIT(食事誘導性体熱産生)
②身体運動=生活活動代謝
③臓器や体内組織の基本機能を支えるため=基礎代謝
となります。
①DIT(食事誘導性体熱産生)とは
食事をするときに消化や吸収のために使われるエネルギーです。食べ物を摂ると、食べたものの一部は消化吸収に必要な熱に変換されて消費されます。
そのため食事をした直後は、安静にしていても代謝量はアップします。
熱いものや辛いものを食べたわけでもないのに、食事中に汗をかくのも、このDITによる作用です。消費エネルギーの10%を占めます。
②生活活動代謝とは
日常生活の中で立つ・座るなどの動作をしたり、仕事をしたり、スポーツやエクササイズなどの運動をしたりなど、体を動かすときに消費されるエネルギーです。消費エネルギーの20%を占めます。
③基礎代謝とは
最低限の生命維持活動のために使われるエネルギー。
私たちの体は、心身共に安静な状態(つまり、特に動いたりしていなくてもという意味)で呼吸したり、内臓を動かしたり、体温を調節したりするのに、消費エネルギーの実に70%を使っているのです。
よく「寝ていても消費されるエネルギー」などと表現されますが、睡眠中の基礎代謝は、起きているときに比べると10%ほど下がるとされています。
それでも、消費エネルギーの大部分を基礎代謝が占めていることには変わりありません。
ちなみに、臓器別にみると、もっともたくさんエネルギーを消費するのは肝臓で、基礎代謝の約27%を占めます。
「無言の臓器」の異名のとおり、黙々と大量の仕事をしているのですね(次に大きいのは脳の19%)。
ということで、
消費エネルギー(100%)=DIT(10%)+生活活動代謝(20%)+基礎代謝(70%)
で成り立っています。
つまり、1日に2000kcalのエネルギーを消費する人なら、
2000kcal=DIT(200kcal)+生活活動代謝(400kcal)+基礎代謝(1400kcal)
ということになりますね。
ということは、この人が消費カロリーをアップしたい場合は、
- DITを200kcalよりアップさせる
- 生活活動代謝を400kcalよりアップさせる
- 基礎代謝を1400kcalよりアップさせる
のいずれかを行えば実現できるということ。
そしてどの項目を、どれくらいアップさせるのが効率的なのか、は人によって違います。
生活代謝が平均よりも低い人は、生活代謝を少し上げる方が効率がいいですし、基礎代謝が低い人は、基礎代謝を上げる方が、効率がいいですものね。
もちろん、すべてのレベルをアップさせることができれば、ダイエットはいっきに加速しますよ!
あなたに必要なエネルギー量とは?
補充するエネルギーよりも消費するエネルギーを多くすれば、痩せるというシンプルな方程式。
それを実現するには、今の自分が1日に消費しているエネルギーを、ある程度正確に、把握しなければなりませんね。
それでは、あなたが1日の活動を行うのに必要なエネルギー量とは、いったいどれくらいのなのでしょうか。
この指標に関してはやはり、日本人と海外諸国とでは違いがありますので、私たちは農林水産省が推奨しているデータを参考にすることにしましょう。
農林水産省が算出した、平均的な人が一日に何カロリー摂取する必要があるかという目安は、
- 活動量の少ない成人女性の場合は、1400~2000kcal程度
- 男性は2200±200kcal程度
です。
これは平均的な体重や運動量、筋肉量などいくつかのポイントに基づいて概算されたものなので、すべての人が必ず当てはまるというわけではありません。
スポーツ選手や妊婦さんは、ここで示されているよりもっと多く摂らなければ、たちまちのうちに痩せてしまい、必要なコンディションを維持することができなくなってしまいます。
反対に、年齢を重ねるとエネルギーの燃え方もゆるやかになるため、高齢の方の摂取カロリーは若い人よりも少量で足ります。
上記の値は、あくまで、基準値と考えてください。
同じ30代女性でも、デスクワーカーとスイミングスクールのコーチとでは、必要なエネルギーは異なります。
私たちの目的はあくまでダイエット。あなただけの、なるべく正確な数値を知る必要がありますよね。そこで、日本医師会が提唱する、推定エネルギー必要量の計算方法をご紹介します。
あなたに必要なエネルギー量の計算方法
日本医師会によると、個々人のエネルギー消費量を知るためには、「二重標識水法」という方法がもっとも正確とされています。
簡単に言うと、その人が持っている基礎代謝量(安静にしていても消費されるエネルギー)と、身体活動レベル(日常生活の中で活動することで消費されるエネルギー)、という2つの要素から計算する方法です。
計算式は、
①基礎代謝量×②身体活動レベル
となっています。
①、②それぞれの求め方と参考表を、以下に記しますね。(参照:日本医師会ホームページ)
①基礎代謝量
安静にしている状態で、呼吸したり、内臓を動かしたり、体温を調節したりするのに消費されるエネルギー。
基準代謝基準値(体重1kg当たりの基礎代謝量の代表値)と、参照体重(該当する年齢の平均体重)をかけあわせることで求められます。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
年齢 | 基礎代謝 基準値 (kcal/kg体重/日) |
参照体重 (kg) |
基礎 代謝量 (kcal/日) |
基礎代謝 基準値 (kcal/kg体重/日) |
参照体重 (kg) |
基礎 代謝量 (kcal/日) |
1-2 | 61.0 | 11.5 | 700 | 59.7 | 11.0 | 660 |
3-5 | 54.8 | 16.5 | 900 | 52.2 | 16.1 | 840 |
6-7 | 44.3 | 22.2 | 980 | 41.9 | 21.9 | 920 |
8-9 | 40.8 | 28.0 | 1140 | 38.3 | 27.4 | 1050 |
10-11 | 37.4 | 35.6 | 1330 | 34.8 | 36.3 | 1260 |
12-14 | 31.0 | 49.0 | 1520 | 29.6 | 47.5 | 1410 |
15-17 | 27.0 | 59.7 | 1610 | 25.3 | 51.9 | 1310 |
18-29 | 24.0 | 63.2 | 1520 | 22.1 | 50.0 | 1110 |
30-49 | 22.3 | 68.5 | 1530 | 21.7 | 53.1 | 1150 |
50-69 | 21.5 | 65.3 | 1400 | 20.7 | 53.0 | 1110 |
70 以上 |
21.5 | 60.0 | 1290 | 20.7 | 49.5 | 1020 |
上記の表によると、例えば30代女性だと基礎代謝基準値は21.7kcal、参照体重は53.1kgで基礎代謝量は1150kcalとなります。
次に、身体活動レベル値を見てみましょう。
②身体活動レベル
日常生活の、平均的な活動強度を示す指標。
1日当たりの総エネルギー消費量を1日当たりの基礎代謝量で割って算出されます。レベルⅠからⅢまであり、男女共通の値となります。
- 身体活動レベルの定義(※15~69歳の活動レベルの例)
レベルⅠ:生活の大部分を座って過ごす、静かな活動が中心の場合
レベルⅡ:座わり仕事が中心で、職場内の移動や立ち仕事、接客、通勤・買い物・軽いスポーツなどを含む場合
レベルⅢ:立ちっぱなしの仕事や移動の多い場合、あるいは余暇にはスポーツをするなど、活発な運動習慣を持っている場合
身体活動レベル | レベル I(低い) | レベル II(ふつう) | レベル III(高い) |
1-2 | – | 1.35 | – |
3-5 | – | 1.45 | – |
6-7 | 1.35 | 1.55 | 1.75 |
8-9 | 1.40 | 1.60 | 1.80 |
10-11 | 1.45 | 1.65 | 1.85 |
12-14 | 1.45 | 1.65 | 1.85 |
15-17 | 1.55 | 1.75 | 1.95 |
18-29 | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
30-49 | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
50-69 | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
70以上 | 1.45 | 1.70 | 1.95 |
またまた30代女性を例にしてみましょう。
先ほど求めた30代女性の基礎代謝量は1150kcal。上記の表によると30代女性で身体活動レベルがⅡの人の場合、身体活動レベル値は1.75となっています。
このふたつをけ合わせると、30代女性で身体活動レベルⅡの人の1日の消費エネルギーが算出されます。
例)30代女性で身体活動レベルⅡの人の1日の消費エネルギー
基礎代謝量1150kcal×身体活動レベル値1.75=2012.5kcal
いかがでしょうか。
ご自分の1日当たりの消費カロリーも、ぜひ計算してみてくださいね。それから重ね重ねになりますが、摂取カロリー計算も忘れずに。
「摂取カロリー<消費カロリー」の不等式に当てはめてみて、2つがイコールなら、体重の増減はありません。
ここでおさらい:摂取カロリーと消費カロリーの関係
摂取カロリー = 消費カロリー=体重変化せず
摂取カロリー > 消費カロリー=体重増加
摂取カロリー < 消費カロリー=体重減少
そしてそこから先の考え方が重要なポイントです。
つまり、体重が変化していない人・体重が増加傾向にある人が、自身のエネルギー収支を「摂取カロリー<消費カロリー」という傾いた状態に持っていくには、摂取と消費の、どちらにアプローチするのか?ということです。
摂取カロリーを減らすのか?
消費カロリーを増やすのか?
判断ポイントは、あなたはどちらのアプローチを採用したい?もしくは採用する必要がある?ということになります。
続けやすいのはどちらでしょう。あるいは、今の自分の状態を考えて、選択すべきはどちらでしょう。もちろん、両方を採用して、
摂取カロリーを減らしながら消費カロリーを増やす!
ことができれば、かなり理想的!
このように具体的に数値化して「エネルギー収支」を把握することで、ダイエットへの意識はだいぶ変わります。
カロリーはあくまで目安ですが、自分が減らすべきカロリーをある程度正確に割り出すことで、選ぶ食べ物や食べる量が明確になります。
それは言い換えれば、食べても大丈夫な食べ物や量がわかるということでもあります。
かつての私がそうだったように、自分のエネルギー収支を把握しない、おおざっぱなダイエットでは、カロリーが高そうなものをなんでもかんでもオールカットしがち。
それでは、食べたくても食べられないストレスフルなダイエットになってしまいますし、食欲に負けてしまったとき反動の暴飲暴食ぶりと自己嫌悪は最悪。
自分のエネルギー収支を把握してからは、食欲を必要以上に抑え込むような無理をしなくなりました。
もちろん、ダイエット中は常にうっすら我慢し続けている状態ではありましたが、やみくもに食べなかったダイエットよりも、何十倍も、体も心もかなり健康でいられました。
痩せる仕組みを理解すれば、効率よく痩せるだけでなく、食べ物への意識も変わり、生活の質を落とさずに健康に過ごすことができます。
カロリー収支の把握は、実はストレスコントロールにもつながるというのが、私の実感です。
誰かの方法だけを真似したダイエットが、あなたにも同じ効果をもたらすかどうかは、かなり不確か。
その人にはその人ならではのカロリー収支があり、あなたにはあなただけのカロリー収支があるからです。
痩せる仕組みさえ理解していれば、その、あなただけに最も効果的な分量や方法を導き出すことが可能です。
